アナログレコードのデジタル(ハイレゾ)化をレビューします。
この記事を読むとデジタル化に必要な機器とプロセスが理解できます。
- 潜在的な課題とデジタル化で実現できるメリット
- デジタル化の準備
- 設定方法
- サウンドデータ管理
レコードのデジタル化で実現できるメリット
☆大きな3つのメリット+1(プラスワン)
- 劣化しない事で現在の価値を継続できる事
①一旦デジタル化すればデータ自体の維持は容易で、分かり易いメリットと言えます。
②デジタル化のプロセスで音源の品質を考慮する必要があります。 - 取り回しにすぐれ”いつでも・どこでも・簡単に”音楽を楽しめる事
①複製・移行・配置が自由です。
②コンピュータは勿論、スマホやサウンドプレーヤー・光メディアプレーヤー等で再生可能です。
③インターネット等通信メディア経由の視聴も可能です。 - デジタル化プロセス・サウンドコントロールに個人的な趣向を加えられる事
①デジタルデバイス(DD&DA・オーディオコンバーター)やサウンドエンジン・ソフトで(残念ながらデジタルも)音質が異なります(を楽しむ事が出来ます)。
②RIAA特性をコントロールする楽しみ方が存在します。 - +1=マイベストを作れます。
お気に入りの選曲のベストアルバムが作れます。
☆手間のかからない運用
- レコード再生前のクリーニング:静電気で付着する埃・ゴミの除去
- レコードの保管場所:枚数が増えると、サイズ・重量も増加し、パッケージ表面を確認しないと中身がわからない為の検索空間も必要
- メンテナンス(歪み・湿気・落下):保管方法・温度湿度・取り扱い不注意による劣化など
- レコード針の定期的な交換
音源のデジタル処理
アナログレコード環境が整ったらデジタル化の準備
1.ラインアウトの機器の決定
それぞれのレコード再生環境に合わせ、ラインアウトの機器を決定します。音出しが出来る(レコードを再生できる)アンプのラインから「デジタル化」するとモニタリングに苦労しません。 また、DACとコンピューターとはUSB接続に依るデジタル処理を前提とし、それ以外の光端子経由のデジタル伝送は対象外とします。
2.デジタル化デバイス(DAC)
現在安価なDACを含めて様々な商品を選択できます。アナログ商品(レコードプレーヤー・アナログアンプなど)は、精度・部品・物量などの投入技術・品質が性能に直結するイメージがあり、コストと性能が比例すると個人的には思っています。しかしデジタル商品は一定レベルの性能*1はバリュー価格でも実現した商品がたくさんあります。
ですので、ここでは特色のある機能・性能を代表する商品を取り上げて、バリューだけの商材との違い・メリットを紹介します。
*1:アンプ出力値/消費電力値・S/N比・入出力数・ボリューム/セレクタ装備・サイズ、コストパフォーマンス値など
お勧めのデジタルコンバータの特徴と価値
- Digi Fi D/D D/Aコンバータ:別記事で紹介したUSB-DAC(雑誌付録)
アナログのRCA(ピン)端子入力を最大96kHz / 24bitのデジタル変換が可能な雑誌付録機器ですが、アナログからデジタル変換が可能です。お持ちの場合は活用をお勧めします。 - KORG DS-DAC-10R:アナログインプットはLINEとPhonoを切り替えて利用出来るため、レコードプレーヤーの直接接続も可能です。
①DSD:2.8224MHz / 5.6448MHz、PCM: 192kHz / 24bit:再生・録音に対応
②AudioGate 4(付属ソフト)によるデータ処理が可能 - MOTU M4:オーディオインターフェースは基本機能としてアナログ入力をデジタルに変換出来、USB-DACとして活用できます。但し入出力端子はXLR又はTRS・モノフォンジャックが多いため、RCA(ピン)変換ジャックなどが必要になります。またDTM-SOFTのライト版が付属しており、音源の録音が可能です。
①DTMで必要な機能(XLR・48V給電・DI・MIDI等)をコンパクトに実装しています。
②この価格帯での音質・レベルメーターなどの性能・機能が高く評価されています。
3.デジタルデーター処理ソフト
パソコンで行う4つの処理
1.データの取り込み処理
2.加工・編集・調整など(ノイズ処理・RIAA補正等)
3.変換処理(フォーマット・ビットレート等)
4.メディア書き出し、サウンドデータとして保管
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デジタル化:機器構成
①Phonograph(レコードプレーヤー+MMカートリッジ)
DENON DP-60M + audio-technica AT150E
②Phono-Equalizer(フォノイコライザー)
AVアンプ内蔵(Phono入力) YAMAHA AZ1
③Audio Interface+Soft
- Digi Fi No15号・No16号+Audacity
- MOTU:M4+Audacity
- MOTU:M4+Cubase
デジタル化の実行プロセス
レコードの最適な再生環境の再確認(良い音で録音する為の準備)
1.ノイズ処理:ノイズの種類と発生源は様々ですが、レコード固有のノイズと対策を実施します。
①ゴミ・埃・静電気系のプチプチノイズ:クリーニングスプレーやレコードクリーナー、静電除去ツールなどで対策します。
②傷に依るブチ音などは原則対策できません。レコードの取り扱いには注意しましょう。
③無音部分で「シー」や「ブーン」音等が聞こえる場合は、音響機器側のSN比やハムノイズなどが想定できます。
④SN比については適正なレベルで録音する事で(人間の耳のマスキング効果・カクテルパーティー効果などで)ノイズが気にならない事も多いと思います。
⑤ いわゆるハムノイズ(ブーン音など) は、レコードプレーヤとアンプ「GNDマーク」と「アース線」で接続する事で低減させる事が可能な場合があります。基本はプリメインアンプ等のアース端子とレコードプレーヤー側のアース端子を1対1で接続しますが、改善しない場合にはノイズが減少するグランド接続をケースバイケースで検証し、可能な限り録音前の音質向上を実施します。
*ここでは「フレームグランド電位」を指します。
2.レコードプレーヤー環境の適正な調整を確認します。
①適正な針圧
②インサイドフォースキャンセラー調整
③レコード面との水平調整
レコードの再生と録音
まず試験録音から開始し、準備が整ったらレコード全体を録音します。
- 録音レベルの調整:デジタル録音では0dbをオーバーしない事が特に重要です。
①アイコンバーのスピーカーマーク(再生レベル)のオプション設定値は「RMS/DB」にします。
②ピーク値はグリーン、ピーク最大値はブルー、レベルマックスはレッドライン(初期値)で表示されます。
③0dbをオーバー(レベルマックス)しない範囲で最大音量で録音します。 - 試験録音が終了したら、レコードA面・B面を再生(本番録音)します。
- 録音終了後、一旦保存します。
デジタル化したレコード音源の処理
1.対象の録音データの読み込み:
メニューバーの「ファイル」から「最近のファイル」などから該当ファイルを読み込みます。
2.ノイズ処理:
レコード取り込みサンプル波形(マイケルジャクソン:スリラー)の様に、曲終わりのフェードアウト後(本来無音部分)のノイズ、そもそも音量の小さな録音部分(効果音やカウントで始まる曲、ソロ楽器でピアニッシモで始まる曲等)は、相対的なSN比の対策が必要なケースも存在します。またスペクトラム波形では確認できませんが、サブソニック領域(凡そ30hz以下)のノイズ処理も必要です。
①超低域ノイズ(サブソニックフィルター・ランブルフィルター)対策
・アンプのサブソニック機能を使う(再生時)
・フォノイコライザーのサブソニック機能を使う(音源取り込み時)
・再生ソフトウエアのイコライザー・ランブルフィルター機能を使う(Audacity・VSTその他)
②曲の頭出しと曲間・曲後(不要部分)削除でアルバムを分割する
・曲のスタート位置を指定し、属性値「コントロールにラベルを付ける」を設定する
・不要部分の削除
③曲間(曲前後)の無音部分の処理
・フェードイン・アウトを利用する
・サウンド以外のデータを編集(削除)し無音部分を追加する
④ノイズゲートを適用するケース
・ノイズと音楽との音量差がある場合に「指定した閾値」以下の音量レベルを下げる(無音も可能)機能です。音量が小さすぎて「閾値」が定義できない場合には(音楽がノイズに埋もれているケース)では正常に機能しません。
⑤ノッチフィルタを適用するケース(周波数・Qファクター)
・特定の周波数スペクトル上の大きなノイズ(ブチ・ガリとか)、または特定のハムノイズ等がある場合、その周波数を減衰するフィルターです。
3.書き出しフォーマットの決定(データ量の把握)
①WAB、Flacなどの音源フォーマットに書き出します。一度書き出すことでデータ量も把握できますので、保存先のストレージ計画もできます。
②曲プロパティ値の設定(FLAC・ALAC)
③データ保管場所(内臓HDD、USBーHDD、NASなど)